1.デザイン手順とパーツ選び・・・3.たて子組み手摺の基本|ロートアイアン鍛鉄製品のレッキーメタル

1.デザイン手順とパーツ選び・・・3.たて子組み手摺の基本

■ デザイナー・設計者・製作担当の皆さまがレッキーメタルのロートアイアンパーツを利用したオーダーメイドの手摺・門扉・格子などのデザイン・作図をするとき、ちょっとしたコツを掴むことでロートアイアンテイストを生かしながらスムーズに作業を進めることができます。例として今回は小さな玄関ポーチとアプローチ階段を想定して、そこに付く手摺をモチーフにデザイン・作図の考え方や作業を見ていきましょう。

1-3-1: 取付場所の図面を用意する

取付ける側の図面を描く
Fig.1-3-1 まず、取付ける側の図面を描く

 「手摺のデザインだから、」と言って、手摺のパターンのアイデアばかりを絞り出していても現実的ではありません。取付ける現場の状況を把握し、その制約のもとで一番マッチしたデザインにする必要があります。そのためには建築用の平面図や立面図、または現場実測値をもとに、まず手摺を取付ける躯体側の様子を図面に描いて行きましょう。

1-3-2: 手摺の概略を書き込む

手摺の位置と高さを決める
Fig1-3-2. 手摺の位置と高さを決める

 平面図に手摺の位置を出します。例ではポーチ際から75mm入った所を手摺の芯にしました。
 主要な親柱の位置を決めます。階段の一段目の端から115mm入った位置とポーチのコーナーにとりあえず設定しておきましょう。
 手摺の高さを決めます。例では、ポーチ部分が1,000mm、階段部分が850mm(段の先端から垂直に図った距離)としました。

1-3-3: 手摺の基本的な形とそのパーツを決める

手摺の基本構造を決める。取付方法をよく理解して作図する事が重要
Fig1-3-3. 手摺の基本構造を決める。取付方法をよく理解して作図する事が重要

 ハンドレール、親柱、ボトムレールの位置とそれに使用するパーツを決めていきます。親柱を正面中央と壁際に1本ずつ追加しました。材料はとりあえず国内流通の25X25mm角棒を使いましょう。取付方法は予め穴を開けた躯体に差し込んでモルタル固定する方法を想定しました。
 ハンドレールは人気の高いカマボコ形の000.30.304(50mmX13mm)を使用します。階段昇り口のレールエンドにはヤクモノの410.00.304を合わせます。ハンドレールを壁にも取付たいのでベースプレートとして384.04.000を選びました。
 ボトムレールには2コーナー槌目風模様の000.30.242(25X8mm)を設定しました。

1-3-4: たて子組みの手摺にしてみる

ネジリ模様のたて子2種を並べたデザイン
Fig1-3-4. ネジリ模様のたて子2種を並べたデザイン

 最もシンプルでリーズナブルなたて子パーツを使ったデザインにしてみましょう。12mm角棒の一部をネジリ加工したたて子パーツ、001.40.024002.40.024 を交互に並べたデザインです。
 たて子パーツの長さは1,000mmありますので、実際の製作工程では上下をレール間の巾に合わせて心振分けで切断して使います。ただし階段とポーチの合わせ目の数本は心振分けにはなりません。
 作図では、レール内々間の中心線とたて子の中心を合わせて、はみ出る部分を消去します。

1-3-5: 一部のたて子を他のたて子パーツに変える

真ん中のたて子を唐草付きのたて子パネルに変えてみる
Fig1-3-5. 真ん中のたて子を唐草付きのたて子パネルに変えてみる

 少しシンプル過ぎたでしょうか? では、真ん中のたて子パーツを108.40.024に変えてみます。12mm角棒に12X6mmの唐草模様や葉をあしらったたて子パネルです。ロートアイアンのデザインとしてバランスが取れてきました。たて子パネルの種類もいくつかありますので、お好みのパーツに入れ替えて感じを見てみましょう。

1-3-6: さらに装飾を増やしてみる

たて子パネルを増やし、親柱もすこし装飾的にする
Fig.1-3-6 たて子パネルを増やし、親柱もすこし装飾的にする

 もう少し華やかにするためにたて子パネルを2つに増やしてみましょう。ここまでくると、親柱にも少し装飾が欲しくなりませんか。階段先端とポーチコーナーの親柱をネジリ模様のついた301.47.028(25X25mm)に変え、さらに真上に343.03.000のギボシをつけてみました。ギボシの首下は長めに出来ているので、製作工程ではバランスの良い長さでカットしてハンドレールの上に溶接固定する方法を取りますから、作図でもバランスがおかしくならないように注意しましょう。ほかに細かい調整ですが、レールエンドが親柱のネジリ部に食い込んでしまいますので、レールの勾配に沿って左方向に移動しておきましょう。ポーチコーナー親柱のネジリ部分中心高さをレール間の中心高さに合わせると下端が12.5mm足りなくなりますが、今回はズルをしてそのままにしておきます。

1-3-7: ジョイントを考える

コーナー親柱で分割、ネジ止め組立
Fig.1-3-7 コーナー親柱で分割、ネジ止め組立

 ほぼデザインは完成しました。
 ここで、運送、現場搬入・取付を考え、手摺を分割しておいて現場で組み立てる方法に変更してみましょう。コーナー親柱から腕木を出しレールを乗せてサッシビス止めする方法にしました。ハンドレールには貫通せずにメクラ穴にタップを切り、腕木下からネジ止めするようにして、目立たなくなるようにしました。製作工程での注意点としては、下地に溶融亜鉛メッキを掛ける場合は下穴だけ開けておき、メッキ後に下穴をサラった後タップ加工をしてください。
 これでトラックやワゴン車に重ねて平積みするのに便利になりました。

1-3-8: デザイン図面の完成

靴金物を描き込んでデザイン図面完成
Fig.1-3-8 靴金物を描き込んでデザイン図面完成

 寸法やスクリプトなどを復活・整理してデザイン図面を完成させましょう。親柱の足元に靴金物を追加しましたが、これは製作過程では溶接固定せず、現場取付の時に親柱に差し込んでボトムレール付近まで上げてテープなどで止めておき、タイル張りなどのポーチ完成後に床面までおろして接着剤止めする仕様です。

■ パーツの切断と溶接組立で比較的容易に製作できる玄関ポーチ手摺ですので、どちらの鉄工所でも難なく製作できるでしょう。このようなデザイン図面は最初から製作寸法を加味していますので、アイデアスケッチやパース図より一段階進めた図面となりました。お客様への提案図としてだけでなく、Fig1-7のジョイント詳細図を添付して、このまま承認要請図・製作図として使えると思います。